キルケズルブログ

切削についてのブログです。

穴あけ・ネジ切りをわかりやすく解説-ドリル・リーマ・タップとは

切削加工では旋盤加工やフライス加工がありますが、その中の一加工として穴あけやネジ切り加工があります。

この記事では、主要な切削加工の一つ「穴あけ加工」の基礎知識をご紹介します。

 

 

穴あけ・ネジ切りをわかりやすく解説-ドリル・リーマ・タップとは

切削では、ワークが回転する旋削と、工具が回転するフライス加工があります。

穴あけはこのどちらにも属する加工です。

基本的にはフライス用の機械で実施されることが多い加工ですが、ドリルを旋盤に取り付けて中心穴を加工したり、旋削工具でボーリングや内径ねじを加工したりすることも可能です。

 

穴あけの概要

穴あけ加工には、穴を開ける加工と穴を繰り広げる加工があります。

穴を開ける加工として、ドリルでの加工や、エンドミルなどを用いたヘリカル穴あけがあります。

穴を繰り広げる加工と工具として、穴を大きくするボーリング(下穴を広げる加工)、穴を仕上げるリーマ(仕上げ)、穴にねじを切るタップ(ねじ切り)などがあります。

工具選定時には、ワーク材質・穴精度や使用機械の機械制限(主軸種類・サイズ・動力・回転数・機械剛性)を考慮しながら工具を選定していきます。

 

穴あけ工具の選定

穴あけ加工用の工具には、刃先交換式、ソリッドドリル、ヘッド交換式の3つのタイプの工具が存在します。

それぞれの工具のメリットとデメリットは下記の通りです。

・刃先交換式(インサート)

 メリット:低コスト・汎用性が高い・再研磨不要 

 デメリット:加工精度低

・ソリッドドリル

 メリット:加工精度高・小径穴可能

 デメリット:高コスト・再研磨要

・ヘッド交換式

 メリット:コストと精度のバランス 

 デメリット:やや中途半端

基本的に、小径の穴を開ける加工やリーマ、タップの加工ではソリッドを使用することが多いです。ソリッド工具には超硬コーティングとハイスコーティングが主に使用されており、ドリルは超硬が主流、タップはハイスが主流、アルミ加工ではダイヤが使用されます。

穴径が大きくなるかこうでは、コスト削減の意図もあって、インサートタイプやヘッド交換式ドリルも使用されます。

 

エンドミルでの穴あけについて

エンドミルで穴を開けることも可能ですが、エンドミルは底刃がないため、ドリルのように真下に工具を下ろすことは基本的にできず、側面を使ってランピング(斜めに工具を下ろす)しながら、螺旋階段上にヘリカルで加工することは可能です。

バリも出にくい加工なのですが、ランピング角度が大きく取れても4度程度となるため、時間がかかるのが玉に瑕。

Sandvikが発売しているCoromill Duraというエンドミルならランピングかくが最大20度まで加工できるため、ランピングする場合はこちらの使用がおすすめです。

 

チャックとコレット

穴あけ加工ではチャックでしっかりと工具を固定することがとても重要です。チャックには様々な種類があります。

チャックの種類

下記上に行くほど把握力・精度良好、コスト大

・油圧-トルクレンチを使用・圧が均等にかかる

・焼き嵌め-熱でチャック・昔は多い方法だった・専用の設備が必要

コレットチャック-ERコレットを使用可能

・シリング・ドリルアダプタ-ボルトでチャックする(点で抑える)

コレットの種類

コレットは外径と内径を適合させる道具です。ホルダーだけで運用する場合、工具の径によってホルダーを複数準備する必要が出てくるのですが、コレットを装着することっで、所有するホルダーが1本で済み、代わりに価格の安いコレットを複数所有して工具に対応することができるようになります。

・ストレートコレット-主に油圧チャックで使用

・ERコレット-コレットチャックで使用

 

穴あけ加工時の注意点

最後に穴あけ加工時の注意点をご紹介します。

切削条件

穴あけ加工の切削条件では、中心と外周で切削速度が異なります。

切削速度は、外周の切削速度100%から中心にいくほど速度が小さくなり中心部では0まで下がります。

そのため、ドリルの外周刃と中心刃では切削速度が変わり、中心刃は切削速度20-50%、外周刃は50%からVc maxで加工することとなります。

中心刃と外周刃で切削速度が異なることから、中心刃と外周刃でチップを変更することも多く、中心刃はシャープなチップ、外周刃は強いチップという組み合わせが一般的です。

切屑処理

穴あけ加工で一番重要なことが切屑の処理です。切屑の処理方法として特に内部クーラントを使用し切屑の排出性を高める方法がおすすめ。

・内部クーラント:切屑排出・刃先冷却・潤滑性向上

・外部クーラント(非推奨):冷却可能だが切屑排出性に効果無(逆効果の可能性も)

切屑の分断方法としてステップ加工という、穴を少しずつ加工していく方法があります。

ステップ加工では、切屑分断にはつながりますが、デメリットである工具寿命ダウンや加工時間が長くなるため、最初に検討するのはクーラントによる改善です。

クーラントでの対策でも切屑の排出性に問題があるという場合には工具メーカーに確認してみると工具面でサポートいただくことが可能です。

 

鋼材と切削を詳しく知るなら

鋼材の特性や鋼材ごとの切削方法をより深く学びたいと思ったときにおすすめな本として、『元素から見た鉄鋼材料と切削の基礎知識』という本がおすすめ。

鋼材の特徴を詳しく解説しながら、その特性に適した加工方法を解説している本で、私もこの本を使って勉強しました。

切削について興味があるという場合には是非こちらの本を読んでみてください。

 

元素から見た鉄鋼材料と切削の基礎知識

元素から見た鉄鋼材料と切削の基礎知識

  • 作者:横山 明宜
  • 発売日: 2012/10/29
  • メディア: 単行本
 

 

終わりに

この記事では、金属切削加工の主な加工方法である「穴あけ加工」について基礎知識をご紹介しました。

穴あけにはドリル、リーマ、ボーリング工具、タップなどが使用され、マシニングセンタでもフライス盤でも加工することがあります。

ソリッド工具が多いですが、インサートタイプやヘッド交換式タイプもありますので、コストと精度を考えながら工具を選定することが大切。

金属加工では切削工程は特に重要な工程ですので、工具は良いものを選定するのが重要。また、問題が発生した時には工具メーカーに相談するのがおすすめです。

 

 

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