切削加工の中で、工具が回転してワークを加工するものをミリング(フライス)加工と呼びます。
ミリングとフライスの違いは、語源がミリングは英語、フライスはドイツ語由来という違いであり、加工方法は同じものを指します。
この記事では、主要な切削加工であるフライス加工についての基礎知識をご紹介します。
フライス・ミリング加工とは-工具回転の切削加工とフライス工具の選び方
切削工具を取り付ける機械には、旋削用の旋盤、フライス加工用のマシニングセンタ、旋削もフライス加工も可能な複合加工機があります。
マシニングセンタを利用して、工具を回転させ、回転した工具でワークを加工するのがフライス・ミリング加工です。
フライス加工の概要
フライス加工は、工具が回転する加工方法。マシニングセンタにフライス工具を取り付けて加工します。
工具検討時には、切込み角、突き出し長さ、カッター径、刃数、工具剛性、チップ材質を被削材などを踏まえて検討します。
また、切削条件は工具寿命に直接関わってくるため、設定時にはユーザーの求める生産性と工具寿命のバランスをとりながら検討していきます。
フライス工具の選定
フライス工具の選定では、まずはワークサイズ・加工タイプ・材質・加工数量などを検討し、続いて使用機械の機械制限(主軸・サイズ・トルク/動力・剛性)を確認して工具を選定します。
工具のタイプとして、平面フライス、肩削り、ランピング、溝加工などの加工内容に合った工具を選定していきます。
フライス工具の種類
フライス工具には、主に刃先交換式(インサートタイプ)、ソリッド工具、ヘッド交換式の3つのタイプがあります。
特徴として、
刃先交換式:工具コストが安い・チップ種類が多い・加工精度はいまいち
ソリッド工具:加工精度良好・小径工具が豊富・コスト高
ヘッド交換式工具:コストと制度のバランスがいい・大径工具が少ない
という違いがあります。
正面フライス、肩削りなどは刃先交換式のカッターを使用することが多いのですが、エンドミルでの加工ではソリッドを使用する場合が多いです。
穴あけでは、ソリッドドリル、ヘッド交換式ドリル、刃先交換式ドリルの順に精度となっていますが、基本的に適材適所でどの工具も使用される加工です。
刃先交換式工具選定
刃先交換式では、インサートの角度によってメリットとデメリットがあり、目的に応じた選定が必要となります。
90°カッター
メリット:汎用的・肩削り加工推奨
デメリット:長い突き出し時工具がビビりやす
45°カッター
メリット:正面フライス加工の一般推奨。バランスの取れた軸・径方向の切削力
デメリット:薄板加工時にワークがびびりやすい
丸駒カッター
メリット:高性能・多目的カッター・刃先頑丈
デメリット:切削抵抗が高い
カッター径の選定
加工幅の1.3倍が目安。
カッター径が小さすぎると加工できず、大きすぎると動力が上がる。
カッター径の計算方法
加工幅ae mm 、カッター径Dc mm
DC=1.3×ae
加工幅40mmなら、40×1.3=52となるため、50mmの標準品を選ぶ
刃数の選定
刃数の選定では、コースピッチ、クロスピッチ、エクストラクロスピッチというのものがあります。
コースピッチ:刃数が少ない、低速・抵抗低い
クロスピッチ:刃数がやや多い、比較的高速
エクストラクロスピッチ:刃数が多い、高速・抵抗高い
不等ピッチ:振動抑
メーカーごとに工具が異なる
旋盤加工の場合、工具がISOで規定されている寸法のものが多く使用されるため、ホルダーとチップのメーカーが異なっていても使用できることが多いのですが、ミリングの場合は各メーカーでホルダーとチップをセットで使用するのが一般的です。
同じメーカーの中でも用途に合わせてカッターとチップが設定されていることが多いため、互換性がないというのも特徴的。
同じメーカーでも、ネガチップのカッターもあればポジチップのカッターもあり、使用コーナー数もカッターによって異なっているという形です。
そのため、ミリングカッターを選定する場合は、用途とカッター・インサートの特徴をしっかりと把握した上で選定するのがおすすめです。
鋼材と切削を詳しく知るなら
鋼材の特性や鋼材ごとの切削方法をより深く学びたいと思ったときにおすすめな本として、『元素から見た鉄鋼材料と切削の基礎知識』という本がおすすめ。
鋼材の特徴を詳しく解説しながら、その特性に適した加工方法を解説している本で、私もこの本を使って勉強しました。
切削について興味があるという場合には是非こちらの本を読んでみてください。
終わりに
この記事では、「フライス加工」について基礎知識と工具の選定方法をご紹介しました。
ミリングカッターは基本的に異なる工具ではインサートの互換性がないため、工具とチップをセットで検討することが大切です。
金属加工では切削工程は特に重要な工程ですので、工具は良いものを選定するのが重要。また、問題が発生した時には工具メーカーに相談するのがおすすめです。