切削加工の中でワークが回転し、工具が回転しない加工のことを旋削加工と呼びます。
その中で溝を掘ったりワークを切断する工程を突っ切り・溝入れと言います。
この記事では、突っ切り・溝入れについてその違いをご紹介します。
突っ切り・溝入れとは-旋盤の突っ切りと溝入れの違いとは
切削加工には、主に旋削加工、フライス加工、穴あけ加工の3つの加工方法が存在します。
工具を取り付ける機械には、旋削用の旋盤、フライス加工用のマシニングセンタ、旋削もフライス加工も可能な複合加工機があります。
旋削加工とは、工具は回らずにワーク(被削材)が回転する加工です。英語ではTurningと呼びます。
この旋盤を使って、ワークに溝を掘るのが溝入れ、溝を掘ってさらにワークを切断までしてしまうのが突っ切りです。
突っ切りとは
完成したワークに溝を入れ、最終的に切削により切断する作業を突っ切りと呼びます。
別名切り落としと呼びます。
加工には突っ切りバイトまたは切り落としカッター等を使用します。
丸鋸や帯鋸でも切断をするのですが、丸鋸や帯鋸は素材(丸棒やパイプ)を切断するのに使用し、突っ切りでは加工したワークの長さを決めるために切断するというイメージです。
工程順で言うと、丸鋸や帯鋸の加工は川上の加工、そこで切断された丸棒を成形して行き、完成品に近くなったときに切断するのが突っ切りで川下の加工となります。
突っ切りは溝入れと同じような工具を使用しますが、溝入れを行った後、ワークの中心部まで溝を深くしていき最終的に切断に至ります。
溝入れとは
突切り加工と同じ加工を行、最後まで切り落とさない加工を溝入れと呼びます。
溝入れには、外径溝入れ、内径溝入れ、端面溝入れがあり、同じ工具でどれも加工できる場合もあれば、それぞれに特化した工具を使い分ける場合もあります。
溝入れの場合は突っ切りと違い溝深さや溝幅を希望寸法に仕上げる必要があるため、径方向の送り量やチップの幅にも気をつける必要があります。
また、内径溝の場合、工具が切削できる最小加工径を必ず確認し、内径加工時や加工後の逃げの際に工具がワークにあたらないかを確認することが大切です。
端面への溝入れを行う場合、浅い溝であれば刃先の逃げ角を大きめに取ることで加工することが可能ですが、深い溝には刃先の逃げ面が干渉してしまうため、端面専用の形になっている端面溝入れ用の工具を使用するのがおすすめです。
突っ切り・溝入れ工具の選定
突っ切り・溝入れ工具では、付け刃タイプ、ステッキバイト、インサートタイプの3つのタイプがあります。
付け刃タイプのバイト
付刃(つけは)バイトは、ロー付けバイトとも呼ばれ、刃先を本体にロー付けしたバイトです。
スローアウェイバイト(インサートタイプ)が、刃(チップ)と本体が別々になっているのに比べ、付刃バイトは刃と本体が一体型になったバイトです。
また、突切り・溝入れの付け刃バイトは多くがヘールバイトとなっています。
ヘールバイトというのは、食い込みとびびりを避けるために、ばねの動きをするように首を曲げたバイトのこと。
突切り・溝入れ加工は仕上げの加工よりも切削負荷に敏感な加工のため、バネの動きをするヘールバイトで切削抵抗を逃しながら加工します。
ステッキバイト(板バイト)
ステッキバイトというのは、板状の完成バイトを取り付けるバイトです。刃先が摩耗してきたら再度研磨を行い徐々に突き出しながら使用していきます。
材質は高速度鋼(ハイス)が一般的で、低速切削、断続切削、不安定切削、成形・再研削が容易で、バイト自体が薄いので、突切り加工や溝入れ加工に適しています。
ステッキバイトの使用にはホルダーが別途必要となります。
インサートタイプ(スローアウェイタイプ)
刃先を交換するインサートタイプの突切り・溝入れバイトもあります。
付け刃バイトやステッキバイトの場合、どんなに上手く刃先を研げるようになっても若干の芯高差が発生してしまいます。
そのため、再研磨を行ったあとは芯高調整を行う必要があり、そこがデメリットです。
インサートタイプのバイトでは、芯高調整が必要なくなるので、その分作業効率が高くなります。
デメリットとしてはハイスのインサートタイプが少なく、機械剛性・主軸動力面で小型旋盤での硬い材料への使用が難しい点があります。
通常の旋盤加工の場合、インサートタイプのバイトは基本的にはチップ(インサート)の互換性があり、ホルダーとチップのメーカーが違っても使用できます。
一方で、突っ切り、溝入れのインサート工具は基本的に各メーカーで独自のホルダー(バイト)を準備しており、チップもそれぞれの工具ごとに決まっています。
そのため、チップの互換性がなく、チップを他社メーカーに切り替える場合、ホルダーごと切り替える必要があります。
ホルダーによって、1コーナー、2コーナー、3コーナーと使用できるチップのコーナー数が異なるのも特徴的。
深い溝を掘る場合にはコーナー数を下げる必要があり、浅い溝ではコーナー数が多いものを使用できるため、より経済的になります。
突っ切り、端面溝、内径溝、外径溝と1つの工具で汎用的に全ての加工ができるものと、それぞれの加工に特化したホルダーもあるので、時と場合によって使い分けることが必要です。
突っ切り、溝入れでブレーカーが異なっていたり、ワーク材質によってチップの材質も変わってくるため、その点もメーカーのカタログを読んだり、メーカーの担当者としっかり相談して決めていきます。
おすすめな切削加工の本
鋼材の特性や鋼材ごとの切削方法をより深く学びたいと思ったときには、『元素から見た鉄鋼材料と切削の基礎知識』という本がおすすめ。
鋼材の特徴を詳しく解説しながら、その特性に適した加工方法を解説している本で、私もこの本を使って勉強しました。
切削について興味があるという場合には是非こちらの本を読んでみてください。
終わりに
この記事では、金属切削加工の主な加工方法である「旋削加工」の中の「突っ切り・溝入れ」について基礎知識をご紹介しました。
ワークに旋盤を使って溝を掘る加工が溝入れ加工。その加工をワーク中心まで進めてワークを切断するのが突っ切り加工です。
金属加工では切削工程は特に重要な工程ですので、工具は良いものを選定するのが重要。また、問題が発生した時には工具メーカーに相談するのがおすすめです。